「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2012/10/21

代書人バートルビー

昨夜の遅くに「代書人バートルビー」(H.メルヴィル著/酒本雅之訳/国書刊行会「バベルの図書館」9」) を読み始めて最後まで読んでしまい、 今朝は寝坊。珈琲と林檎を一つだけの朝食。

「代書人バートルビー」は時々、読み返してしまう不思議な魅力のある短編。 法律事務所を営む主人公がバートルビーという男を代書人として雇う。 なかなか有能そうに思えたのだが、 書写以外のどんな仕事をさせようとしても「せずにすめばありがたいのですが」 と静かに、しかし断固として断ることに、主人公は気付き始める。 状況は徐々に悪化して、ついにはバートルビーは書写も含めて一切の仕事をしなくなり、 何も「せずにすめばありがたいのですが」の状態で、 オフィスに完全に住みついてしまう、という奇妙な物語。 それだけの話なのだが、何か気になる短編である。 もし私が明日からオフィスで、全ての業務を「せずにすめばありがたいのですが」 と言い始めたらどうなるのだろう、とか、考えてしまうからだろうか。 恐しいことに、何の問題もなかったりして。

この短編を所収している「バベルの図書館」のシリーズも、 岩波文庫の「幽霊船 他一篇」も、現在入手し難いので、 なかなか人に薦められなかったのだが、 どうやら柴田元幸訳の「書写人バートルビー — ウォール街の物語」の pdf ファイルが インタネット上にあるようだ ("bartleby_h.pdf")。 柴田訳では、「せずにすめばありがたいのですが」が「そうしない方が好ましいのですが」 になっていて、酒本訳の方が私は好みなのだが、それは読者によりけりだろう。

昼食は、菠薐草のスパゲティ・アーリオオーリオ、鶏肉のオムレツにバジルソース。 午後、親切な知人から大量の野菜が届く。 傷まないうちにどうやって食べ切るか、または保存食化するか、腕の見せ所ではある。 先週は実家から送ってもらった食材で暮らしたが、 今日からしばらくはこの食材で暮らせそう。ありがたし。

夕方、図書館に本を借りに行くついでに、 スーパーで野菜以外の食材を調達。 帰宅して夕食の支度。 秋鮭を焼き、じゃこと獅子唐の炒め煮、 冷奴(葱と生姜)、白菜の浅漬、胡瓜の糠漬、しめじと葱の味噌汁、御飯。 食後に柿を一つ。