「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2015/03/01

蛤と深川丼

7 時起床。昨日の食事が荒れていたので、今日の朝食はヨーグルトと珈琲のみ。昼食はポテトサラダと、帆立のカレーライス、白ワインを一杯だけ。

冷たい雨の中、外出したくはなかったのだが、冷蔵庫が空なのでしようがない。食材の買い出しに近くのスーパーに行く。雛祭りの御澄まし用にびっくりするくらい高価な蛤がずらりと並んでいるのを横目に、浅蜊の剥き身を少量買う。

夕食は板わさで冷酒を五勺ののち、深川丼(浅蜊と長葱)。深川丼とは貝類と葱の汁かけ御飯である。最近は浅蜊が普通だと思うが、元来は青柳を使ったもので、下層労働者向けのファーストフードだったそうだ。また、確か池波正太郎が蛤の深川丼について書いていたはずだ、と思い書架を調べてみた。

池波氏が書くには、昔は陰暦三月三日の雛節句から仲秋の八月十五夜まで蛤を口にせぬのがならわしだったため、ゆえに、蛤には逝く春を惜しむ風情がある、とのことである。昔は蛤は庶民の食べ物で、池波氏が子供の頃は、蛤の炊き込み御飯や深川丼を良く食べさせられたそうだ。しかし、昭和五十五年の文章に既に、「いまの蛤は、何しろ高い。とても庶民の口には入らぬ。(……中略……)それほどに、蛤らしい蛤が滅びつつあるわけだろう。」とお書きになっている。蛤の深川丼はうまいだろうなあ。