「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2015/03/08

「生野」のイソベ

いつものことだが、良く寝た。今日も朝から雨が降り、寒い一日。春はまだ遠そうだ。

珈琲とヨーグルトだけの簡単な朝食。洗濯をしてから風呂に入り、湯船で「汽車旅の酒」(吉田健一著/中公文庫)を読む。昔の食堂車の料理があんなに旨かったのは安い調味料をふんだんに使っていたからだろう、あれは西洋風の砂糖醤油の味だ、なんてところに、吉田健一は正直だなと思う。食堂車のハムエッグスに辛子やソースをたっぷりかけると、「不思議に正直な味がして、実にいい。」なんて文章にぐっとくる。

昼食まで玉葱のピクルスで白ワインを一杯だけ飲みながら、「血統」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ・ミステリ 1073)を読む。ブロッコリのオムレツなども作って食べ、自然に昼食に移行し、最後はイソベで終える。イソベは大阪の「生野」という鰻屋のメニューとして小島政二郎の「食いしん坊」(河出文庫)に具体的な描写が出ている。鰻の白焼のお茶漬けのようなもので、おそらく「イソベ」という名前はもみ海苔から来たのだろう。御飯と鰻の白焼のざく切りを交互に丼に盛り、もみ海苔をして真ん中に山葵を乗せ、その上から澄まし汁をかけていただく、という料理である。ただし、「生野」という店もイソベというメニューも現存しているのかどうか知らない。

このイソベを小島政二郎はあまり誉めていないが、読むからに酒を飲んだあとにあっさりと食べるのに良さそうである。鰻の白焼が手に入ったので作ってみたら、味は全く予想通りで、大変けっこうだった。小島政二郎は大の甘党で酒は飲めなかったらしいので、この手のものに点数が辛いのかも知れない。

夕食は牡蠣と春菊の味噌焼き、御飯と若布の澄まし汁。D.フランシス「血統」、読了。