「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/05/31

演習問題

むしむしとする曇り空。いつもの納豆定食の朝食を済ませたあと、珈琲を飲みながら、ラテン語の勉強を三十分、老人性痴呆症の進行を少しでも遅らせるため数独を三十分。のち、外出。ええと、家を出て何をするんだつたつけ……としばし悩んでから出勤のため電車に乗る。

夕方退社。帰りの車中の読書は「黄金」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)。帰宅して風呂に入り、湯船の読書は「乙女の読書道」(池澤春菜著/本の雑誌社)。夕食の支度。出来合ひの焼き餃子で赤ワインを少々。のち、冷奴、筍御飯、豚汁。夜は線形代数の演習問題を数題解いて、「モンテ=クリスト伯爵」(デュマ著/大矢タカヤス訳/新井書院)など。

2016/05/30

シャトオ・ディケムの赤

雨の月曜日。家にゐられるなら雨は大好きだが、出勤しかも月曜日では憂鬱にもなる。往きの車中で「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)の第一巻を読了。「若紫」の帖まで。ただの幼女誘拐、拉致監禁なのでは……と思ひつつ、光源氏青年のご乱行は「末摘花」に続く。

休憩時間に久生十蘭の「キャラコさん」から「雪の山小屋」一編を読む。心が洗はれるなあ。「紅玉のようなシャトオ・ディケムを注いで廻る」と言ふ一文があるのを見つけ、私の知る限りイケムの畑に赤ワイン用の葡萄はないはずなので、流石の十蘭も何せ昔の人だ、かういふ間違ひもするのだなあ、と思ひつつも、キャラコさんの大活躍に酔ふ一時であつた。

十蘭と言へば、博覧強記、魔術師の如き技巧、徹底的な添削、マニエリスムの権化、みたいなイメージを持たれてゐるが、自分の思ひ込みと調子に任せてすらすら書き飛ばしてゐるやうな面もあつて、どちらかと言へばその猛烈なスピード感が持ち味だと思ふ。このくらゐ速い文章を書ける人は他にゐない。確か、橋本治が十蘭の勘違ひについて同じやうな論考を書いてゐたはず。

夕方退社。ぼんやりしてゐたら、傘もジャケットもオフィスに置き忘れてきてしまひ、冷たい小雨に濡れながら帰宅。風呂に入つて「SF の S は、ステキの S」(池澤春菜著/coco マンガ・イラスト/早川書房)で身体を温める。読了。次は「乙女の読書道」も読もう。夕食は、週末に作つて感動した十目焼きそばをアンコール。やはりうまい。赤ワインを一杯だけ。夜は「モンテ=クリスト伯爵」(デュマ著/大矢タカヤス訳/新井書院)など。

2016/05/29

「ハムレット復讐せよ」

家事と料理の他は、主に「ハムレット復讐せよ」(M.イネス著/滝口達也訳/国書刊行会)を読む楽しき一日。登場人物が「主な登場人物」表で 36 名 と多過ぎて、読み進め難いのは事実。しかし、小説の中で説明されてゐるやうに、「ハムレット」自体に台詞のある役が 30 あり、「ハムレット復讐せよ」の登場人物が「ハムレット」を演じるといふ設定上、これくらゐの数になつてしまふ。また、シェイクスピアと演劇に関する衒学的な会話や記述も多過ぎ、プロット自体の単純さに比較して枝葉が無闇に過剰で、時にオフビートとすら言へるが、それが楽しい小説であると思ふ。

例へば、著者イネス自身がモデルと思はれるエリザベス朝学者ゴットが、余技に書いた探偵小説(「動物園殺人事件」(笑))を何度もからかはれるなど、コミカルな場面がかなりある。そして皆やたらと呑気で、物知りで、がやがやしている。だけど上品。英国製年代物スパークリングワインの趣である。この雰囲気こそ「ハムレット復讐せよ」の良さではないか。谷口年史氏が「解説」で、この小説の書かれた、そして舞台設定されてゐると思はれる年代が、政治と国際情勢が緊迫した時代だつたことを指摘しておられるが、物語の中では表面的にしか扱はれない。それは、イネスならぬゴット先生が「ほんものの余暇ある時代は去った」と感慨し、アン公爵夫人の企画する「ハムレット」上演を巡るドタバタにその名残を感じるやうに、この「ハムレット復讐せよ」自体がその余裕であるからなのかも知れない。なお、プロット面でも「ある詩人への挽歌」同様に最後の最後でのツイストが効果的で名作の名に恥ぢない。

ところで、ささいなことだが、p.28 で「フローレーアト・スチエンチア(ラテン語。学問に栄光あれ)」といふ台詞があるが、ラテン語で "c" の発音は常に固い "k" 音なので "scientia" は「スキエンチア」が正しい。これを話してゐるのは、録音機を持ち歩いて発音の採集に余念のない(そこがまた怪しいのだがそれはさておき)アメリカ人言語学教授といふ設定なので、実は偽学者でアメリカ人と言ひつつ実はイタリア人、といふ伏線かも知れないぞ、などと穿つた読み方をされるのがミステリの問題点である。著者だけではなくて翻訳者も注意しなければならない。


2016/05/28

「ある詩人への挽歌」

「ある詩人への挽歌」(M.イネス著/桐藤ゆき子訳/現代教養文庫)、読了。「幻の名著」と言ふほどではないが、確かに傑作。「月長石」のやうに語り手が次々交代して行く度、事件の見方も変はつて行くところが効果的で、単なる「月長石」の真似ではない。それから良く言はれることではあるが、冬のスコットランドを舞台にした雰囲気がとても良い。これは原書で読まないと本当の味が分からないかも知れないのだが、スコットランド方言で書かれてゐる部分もあるさうなので(おそらく主に「イーワン・ベルの記述」部分か)、難しいかな……でも、イネスを原書で読むのは後回しにして、次は「ハムレット復讐せよ」だ。

その他の読書は、「SF の S は、ステキの S」(池澤春菜著/coco イラスト・マンガ/早川書房)、「モンテ=クリスト伯爵」(デュマ著/大矢タカヤス訳/新井書院)。

休日なので少し手の込んだ料理をしようと思つて、昼食は十目焼きそば(豚肉、鶏肉、海老、烏賊、椎茸、筍、人参、キャベツ、もやし、絹莢)。「おとこ料理讀本」(矢吹申彦著/平凡社)のレシピによる。ここまで手間をかけても食べるのは一瞬だし、五目も十目も大差ない気もするのだが、確かに美味しいことは間違ひなく、もう少しだけ美味しくのために二倍手間をかけるのが料理かな、と。ちなみに夕食のメインは手間のかからない蒸し鶏。

明日の二倍手間料理はハンバーグの予定。

2016/05/27

至福の週末

また週末がやつて来た。喜ばしい。これが「反復」の有り難さ、といふものか。帰り道で、焼き餃子、焼売、紫陽花、ビールを買つて、帰宅。風呂に入つてから、葉物と新玉葱でサラダを作り、餃子と焼売でビールを飲みながら、「SF の S は、ステキの S」(池澤春菜著/coco イラスト・マンガ/早川書房)を読む。至福だ。

週末は「モンテ=クリスト伯爵」を読んだり、マイクル・イネスを読んだり、線形代数を勉強したり、ラテン語を勉強したり、"Problem Paradise" のチェス・プロブレムを解いたり、数独を解いたり、ハンバーグを作つたり、(鉄板)焼きそばを作つたりする予定。

2016/05/26

もろきゅう

夕方からのミーティングで帰りが少し遅くなつた。御飯を炊いてゐる時間がなく、もろきゅうで冷酒五勺ののち、饂飩を茹でて、生卵と刻み葱と醤油と七味をかけて食す。うどんうまい。

帰りの車内で「四月の屍衣」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ文庫)、読了。これでミステリはマイクル・イネスに集中できる。

2016/05/25

フリッツ・ライバー

気温が上がつてくると生花の持ちが悪くなつて困るなあ……と思ひながら花瓶の水を入れ替へる朝。

夕方退社して帰宅。湯船の読書は「モーフィー時計の午前零時」(若島正編/国書刊行会)よりフリッツ・ライバー作、若島正訳の表題作。「殊能将之読書日記 2000-2009」(講談社)を読むと、フリッツ・ライバーつて変てこりんなSFばかり書いてゐるやうなのだが、さう言へば「モーフィー時計」がライバー作だ、と思つて読み返してみた。やはり記憶通り、チェス・マニアが書いた端正な好短篇、と言ふ感じで、オフィスの机の中にあふれる女たち、のやうな妄想を爆発させるエロ親父とは思へない。なかなか奥深い作家らしい。

2016/05/24

読書プロジェクト

同僚と話してゐて、小さな冷蔵庫として小型のワインセラーを買つた、と言ふ発想に感動した。合理的でいかにも便利。居間にも置けて、夏にちよつとビールなんか取り出して飲める。素敵だ。

帰宅して風呂に入つてから夕食の支度。冷奴で冷酒を五勺。のち、出来合いの豚カツを使つてカツ丼と、三つ葉と蒲鉾の澄まし汁。

最近のプロジェクトの一つ、「マイクル・イネスを集中的に読んでやろう」の一環として、夜は「ある詩人への挽歌」(M.イネス著/桐藤ゆき子訳/現代教養文庫)。とりあへず日本語に訳されてゐるものを全部読んで、その後、原書を読んで行く予定。プロジェクト期間は大体一年間くらゐとして考へてゐる。

私はしばしば、かう言ふ「プロジェクト」を立案する。私がとても楽しい、と言ふ以外には、古本屋くらいしか喜ばない、全く非生産的で時間の無駄そのものの計画である。現在、ディック・フランシスを全部読む計画(あと 13 冊)、レジナルド・ヒルのダルジール警視シリーズを全部読む計画(あと 8 冊)も実行中だし、命のある間に、シムノンのメグレもの、E.S.ガードナーのペリー・メイスンもの、などなど読破したいものが山のやうにあつて、時間がいくらあつても足りない。読むのはわし一人なのに書くやつが多くてかなはん、と言つたのは、誰だつたつけ……高木貞治?

2016/05/23

薄暑と言ふより夏

今日は気温が三十度を越したやうだ。昼間は外に出なかつたので実感はしてゐないが、今から辛い気持ちになる。嗚呼、また私が大の苦手とする夏が来るのか。早く仕事を辞めて夏はほとんど外に出なくて良い生活がしたいものだ。または声の良い秘書を連れて避暑に行きたい。そして昼間は木陰で「モンテ・クリスト伯」か「月長石」を秘書に朗読してもらいながら、ビールを飲む、なんて言ふ涼しげな夏を過したい。けして贅沢は言はぬ、その証拠に、夕食は素麺でいい。

などと妄想しつつ帰宅。風呂に入つてから夕食の支度。冷奴、板山葵で冷酒を五勺。のち、いただきものの鯛で鯛飯を炊く(昨日、半身を塩焼にした)。三つ葉の澄まし汁と。食後に中国茶。

2016/05/22

イネスの短篇

良い天気の日曜日。気温も上がり、歳時記で言へば「薄暑」か。家事の他には特に用事もないので読書など。

「アプルビイの事件簿」(M.イネス著/大久保康雄訳/創元推理文庫)、読了。名作とされる「死者の靴」など確かに、まさに都筑道夫の言ふモダン・ディテクティヴの典型であるなあと思ふのだが、一つ言へば、イネスには言はゆる「フェアプレイ」を遵守する気があまりない。しかし、期待する方が変なので、イネスの真髄は「家霊の所業」のやうな作品のひねつたユーモアにあると思ふし、「終わりの終わり」のやうなカーのミニチュア(「ミニ・カー」と呼んでみたりして)的なものも書けるし、ショートショートもうまい、と言つた具合に、短篇についてはその器用さを楽しむのが正しいのではないか。次は「ある詩人への挽歌」(M.イネス著/桐藤ゆき子訳/現代教養文庫)を読む予定。

夜は「モンテ=クリスト伯爵」(デュマ著/大矢タカヤス訳/新井書院)を読んだり。



2016/05/21

イネス/キマイラの新しい城

定例のデリバティヴ研究部会自主ゼミと参加メンバによるランチで解散のあと、神保町へ。主にミステリ系の古本を渉猟。殊能将之の次はマイケル・イネスを集中的に読んでみようと思ひ、あれこれ。「ある詩人への挽歌」(M.イネス著/桐藤ゆき子訳/現代教養文庫)、「ハムレット復讐せよ」(M.イネス著/滝口達也訳/国書刊行会)、"The Bloody Wood"  (M.Innes / Perennial Library), "The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin) など。

帰宅してから午後は「キマイラの新しい城」(殊能将之著/講談社文庫)を読む。夕方になって風呂に入り、夕食の支度。板山葵とビールを一杯だけ。のち、お好み焼き。夜も「キマイラの新しい城」を読む。読了。この筋書と戦争の背景など、ちよつと久生十蘭の短篇「ハムレット」を思ひ出した。ひよつとしたらアイデアの源の一つかも知れない。と思つたが、巻末の「参考・引用文献」には入つてゐない。それから島田荘司の御手洗潔ものの某作品も参考文献に入れるべきではなかつたか、とも思つた。

夏ごろも猫の毛並みの心地よさ

2016/05/20

週末の計画

夕方、本郷で所用を片付けてから、ハンバーガー屋でシーザーサラダとチリビーンズチーズバーガーでビールを飲みつつ、コクヨの野帳を開き、一人で今週の反省会。吾ガ身ヲ三省ス。帰宅して、夜は「アプルビイの事件簿」(M.イネス著/大久保康雄訳/創元推理文庫)を読んだり。イネス、いいね。

週末は「キマイラの新しい城」(殊能将之著/講談社文庫)を読むのが楽しみ。それに愛読書の「モンテ・クリスト伯」を読み返したいとも思つてゐたんだつた(岩波文庫版で全七巻、新井書院オペラオムニア叢書版で 1486 ページ、Penguin  Classics 版で 1276 ページ)。それから、某雑誌に頼まれた小文の校正をして、料理の仕込みをして、一週間分の家事もして、スピノザの研究もしたいし、ラテン語の勉強の貯金もしたいし、フーガの技法について調べたいとも思つてゐたんだ……休日はいくらあつても足りない。

2016/05/19

酢の物

帰宅して風呂のあと夕食の支度。胡瓜一本分の酢の物を食べてしまつた。ストレスか妊娠かどちらかのせゐだらう。この記述で、やうやく私が実は女性であることに気付いた方もゐるかも知れない。数学者、代表取締役と云ふと、男だと頭から思ひ込んでしまふ。ミステリの世界では忘れた頃に用ひられる傾向のある、古き良き叙述トリックである。

冗談はそれくらゐにして、酢の物のあとは出来合いの焼き餃子で赤ワインを一杯だけ。食後に蜜柑を一つ、中国茶を少々。

夜は猫と寝床に並んでゴールドベルグ変奏曲を聞きながら、「アプルビイの事件簿」(M.イネス著/大久保康雄訳/創元推理文庫)より短篇をいくつか読み返したり、スピノザ「エチカ」研究をしたりと楽しく暮す。

2016/05/18

嫌味なインテリ英国人の完成形

帰りの電車は事故の影響で大混雑。しかしこれも永遠の相のもとに眺めれば必然……と心を静めて「四月の屍衣」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ文庫)に集中する。

芍薬があつと言ふ間に咲いて散つてしまつたので、花屋で薔薇(トワバイオン)を買つて帰宅。風呂に入つて湯船で「殊能将之読書日記 2000-2009」(講談社)を読む。マイクル・イネスは「嫌味なインテリ英国人の完成形」つて言ふのがいい。私はアプルビイものの短編集とポケミスの「ハムレット復讐せよ」くらゐしか読んだことがないが、俄然他の作品が読みたくなつて来た。

夕食の支度。今日は精進日なので肉食と五葷を避け、出来合いの精進かき揚げ、うすいえんどうの豆ごはん、若布と油揚げの味噌汁。食後に中国茶。心静かに精進日を過す。

芍薬は五日でほぐれ次の花

2016/05/17

兎と亀

意外と色々とカフリンクスを持つてゐることが判明。自分で買つたやうな記憶がまるでないのだが、若い頃はお洒落だつたのだらうか、それとも貢いでくれる人でもゐたのか(反語:いや、そんな記憶もない)。兎と亀のカフリンクス。"Festina lente" と言つたところか。

定例会議二つのあと、渋谷に移動して、夕方から出先で二時間ほどミーティング。そして先程、帰宅。夕食を食べ損ねたので、蒸しブロッコリと出来合いの焼き餃子でビールの夕食中。やれやれ今日は働いたつて感じだなあ、と、ハープ版ゴールドベルグ変奏曲に癒されてゐる、今まさに。

寝る前に風呂に入つて、湯船で「殊能将之読書日記 2000-2009」(講談社)を読むんだ……そして明日もがんばりませう。

2016/05/16

猫と蛇

同僚が子供さんの熱望に応へて蛇を飼ひ始めたのだが、いづれ繁殖と言ふことになるのではないか、その時には私の所に一匹などと恐しいことを言ふので、断固として断わつておく。蛇と猫は相性が悪さうだし、家に帰つてみたら「星の王子様」の帽子のやうになつた蛇を目撃することになつたら大変だ。

帰宅して風呂に入つてから夕食の支度。大根おろしにちりめんじやこ、板山葵で冷酒を五勺ほど。のち、塩鯖の酒焼き、大根おろし、油揚げと三つ葉の味噌汁、御飯。

生肉が届く予定だつたのだが、配達が夕食の支度に間に合はず。

2016/05/15

芍薬

芍薬の蕾水呑む速さかな
芍薬の花弁落つる妙手かな

2016/05/14

オフビート

勉強会が予定されてゐたのだが、キャンパスの爆破予告のためお休み。休日用の簡易朝食、毎日のラテン語("Wheelock's Latin")のあと、朝風呂に入つて数独を一つ解く。

昼食は土曜日のお決まり、お好み焼きとビール。午後は「黒い仏」(殊能将之著/講談社文庫)を読んだり。お八つはシュークリームと珈琲。読了。オフビートだなあ……明日は続けて「鏡の中は日曜日」を読む予定。

夕方また風呂に入つてから夕食の支度。菠薐草のひたしと蒲鉾の刺身で冷酒を五勺。のち、親子丼。食後に台湾茶。

2016/05/13

凪の金曜日

今日は今週の凪のような一日で、特に何事もなし。原稿の推敲など一人作業の仕事をして過す。

帰宅。帰り道で買つた芍薬を生けてから風呂。湯船で歳時記を読みつつ五七五。

湯上がりに、菠薐草のひたし、ポテトサラダ、鶏レバのウスターソース漬けの三品で、ビール。週末は何を読もうかなあ、何から勉強しようかなあ、と楽しく考へる。

2016/05/12

カフリンクス

朝、着替へてゐたらシャツの袖のボタンがとれてしまひ、縫ひつけてゐる時間がないので、やむを得ずカフリンクスをつけて出動。

夕方から他部署との勉強会のやうなものがあつたのだが、今日は精進日だつたので、外食することができず、コンビニのおにぎりの夕食。わびしさに何だか意気消沈。勉強会での発表も駄目な感じで、なおさらがつくりと来て、肩を落として帰宅する。朝に一つうまく行かなかつた調子が一日中続くことがあるものだ。ボタンのかけ違ひ、と言ふものだらうか。

そして、これからお風呂。

2016/05/11

「不屈」

夕方から往訪の仕事をして、そのまま帰路につく。今日も何とか仕事を終へて、週も半ばを過ぎた。湯船でスピノザの「エチカ」を少し読み、湯上がりにアヴォカドの刺身や油揚げと五勺ばかりの酒でくつろぐ。また明日も頑張りませう。

帰りの車中で「不屈」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)を読了。今回の主人公は画家とは言へ、やはり典型的なディック・フランシス的主人公。「不屈」はかなり後期に書かれた作品だが、マンネリズムも芸の域に達してゐて、初期の傑作に劣らぬ出来栄えだと思つた。明日から帰りの読書はレジナルド・ヒルに戻つて「四月の屍衣」の予定。

2016/05/10

目黒にて会食

雨がちの一日。まだ梅雨ではないだらうが、こんな日が続いてゐる。ゴールデンウィーク明けなので日常、普段、と言ふものが辛い。

夜は目黒の焼き鳥屋にて会食。今、帰宅してこれから風呂。湯船の読書はおそらく、最近の愛読書「エティカ」(スピノザ著/工藤喜作・斎藤博訳/中公クラシクス)。

「なぜなら、もし幸福が手近なところにあり、たいした労力もかけず見いだされるならば、それをほとんどすべての人がどうして無視することができようか。とにかくすぐれたものは、すべて稀有であるとともに困難である。」

2016/05/09

発作的にオムライス

ゴールデンウィーク明けの月曜日。通勤電車が妙に混んでゐるなと思つたら、ダイヤの乱れのせゐらしい。往きの車中の読書は「源氏物語」(紫式部著/玉川琢彌訳注/角川ソフィア文庫)。「帚木」から「空蝉」の帖に入つた。

帰りの車中の読書は「不屈」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)。初夏の雨の中を帰宅して、まず風呂。湯船の読書は「今はじめる人のための俳句歳時記」(角川学芸出版編/角川文庫)。やつぱり年寄は俳句だよな、歳時記だよ、と湯船にて強くうなづく。年寄はやはり俳句だ歳時記だ。おや、一句できた。

湯上がりにポテトサラダ、菠薐草のひたしにしらすでビールを一杯だけ。のち、何故だか昼から猛烈にオムライスが食べたかつたので、作つて食べる。満足した。

2016/05/08

しかし待てよ

今週のハイライトは歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」の昼の部。「十六夜清心」、清心を勤めた菊之助の「しかあし、待てよお」が良かつた。

悪人が何かをきつかけに改心して僧になる、といふやうな話はよくあるが、「十六夜清心」は逆さまで、僧が改心して悪人になる。しかし待てよ、一人殺しても千人殺してもとられる首はこの一つだけだぞ、ぢやあこれからは……となる逆改心の瞬間を演じるところが眼目。今の菊之助の芝居はまだ軽いが、今後にも期待したい。

2016/05/06

今日も平日

以前ならば、三日休んで一日働くと言ふのはなかなか良いリズムだ、なんて呑気に思つたものだつたのだが、最近は三日休むと休み癖がついてしまつて、世間に出て行くだけにも疲れてしまふ。むしろ、毎日同じ調子で行動するのが良いのかも知れない。

帰宅して、風呂に入つてから夕食。筑前煮と「フィリップス氏の普通の一日」(J.ランチェスター著/高儀進訳/白水社)でビールを一杯だけ。のち、お土産の握り鮨。

夜は「フィリップス氏」の読書など。

2016/05/02

今日は平日

私のゴールデンウィークはカレンダ通りなので、平日の今日は出勤。三連休で少し夜更かし癖がついて、寝不足。朝食のあと、ラテン語の勉強をしてから出勤。このゴールデンウィークは集中的にスピノザを読もうと決めてゐるので、車中の読書も往復ともに「神・人間及び人間の幸福に関する短論文」(スピノザ著/畠中尚志訳/岩波文庫)。

さて今日の仕事も終わつた。「永遠の相のもとに見る」、この世界をこれで全きものと見る、と言ふことは、とても難しいなあ、と思ふ。スピノザ自身が「たしかに、すべて高貴なものは稀であるとともに困難である」と書いてはゐるが。

やはり信仰が足りないのだらうなあ、私はまだしばらく世間で修行をした方が良ささうだ、などと思ひつつ、神保町へ。まず馴染の珈琲屋で憩ふ。そして、じやが芋が先に出てくるタイプのカレーライス屋で夕食。

吉野朔美さんが四月に病気で亡くなつてゐたことを知る。残念だ。