「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2016/10/31

常夜鍋

また月曜日。大寢坊して、勉強の時間はほとんどとれず。しかし、何もしないよりはまし、勉強と仕事は儀式のやうに毎日することが奥義、と言ふ信念のもと、ラテン語は文を二つ解釈し、數學基礎論は選択公理のところを十行ほど讀んだ。

いつもの時間に出社し、いつもの時間に退社。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。豚肉と小松菜の常夜鍋。ワインを一杯だけ。そのあとの雑炊。雑炊は最高。今日は一日首筋のあたりがぞくぞくして、少し風邪気味のやうな氣がしてゐたが、撃退できたかも。

夜は「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂・序文 / 国書刊行会)より「千夜一夜物語 バートン版」(由良君美訳)など。

2016/10/30

日曜日

猫が寒さうにしてゐるので、そろそろホットマット(人間用の座ホットマットを利用)を出してやるかなあ、と思ふ週末。

朝食は、昨日と正確に同じ、チアシード入りのヨーグルト、チリビーンズ、キヌア、目玉焼き、珈琲。朝風呂の湯船で "The importance of living" (Lin Yutang / Harper)を讀む。

雑用をしてゐるうちに晝になり晝食は、玉葱とツナのカレー風味のサラダ、明太子のフェデリーニ、スペイン産の白ワインを一杯だけ。のち、ワインの殘りでカマンベールチーズの燻製を一切れ。腹ごなしに近所の図書館まで本を返しに行くついでの散歩。歸宅して家事と讀書。Lin Yutang の續きや、「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂・序文 / 国書刊行会)のヘンリー・ジェイムズの巻「友だちの友だち」など。

夕方になつてまづ風呂。湯船の讀書は「茶話」(薄田泣菫著/冨山房百科文庫)。夕食の支度。南瓜の煮付け、だし巻き、鯵のひらき、豆腐と糸寒天の味噌汁、押し麦入りの御飯。良い週末だつた。さて、また明日からお勤めだ。


2016/10/29

「ノースモア卿夫妻の転落」

寢坊。秋立ちて幾日もあらねどこの寢ぬる朝明の風はたもと寒しも。洗濯をしてから、朝食の支度。チアシード入りのヨーグルト、チリビーンズ、キヌア、目玉焼き、珈琲。朝風呂。湯船の讀書は、 "The importance of living" (Lin Yutang / Harper).

ぼうつとしてゐるうちに晝になり、午餐の支度。肉がないので牛モツを少し使つて、お好み焼き。チーズを切つて、ワインを一杯だけ。食後に少し晝寢を、と思つて寢台に横になつたら二時間以上寢てしまつた。秋の日は釣瓶落とし。夕食の時間まで、「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂・序文/国書刊行会)のヘンリー・ジェイムズの巻「友だちの友だち」から、「ノースモア卿夫妻の転落」(大津栄一郎訳)を讀む。

有名政治家ノースモア卿が死ぬ。續いて、卿の旧友でライヴァルでありながら、その影に隠れるやうに何の成功も手に出來なかつたホープ氏も亡くなる。遺されたホープ夫人は人生が不公正であるやうな複雑な気持ちを抱く。そこに卿の書簡集出版の企画が持ち上がり、卿夫人からホープ夫人のところにも卿の手紙が保存されてゐないかと連絡が來る。実際、氏は卿からの大量の手紙を全て保存してゐた。夫人はどう返事するか悩む……と言ふやうなお話。一種の復讐譚だが、意地の惡さと精密な心理描写のメスが、凡庸さ、才能、成功、幸福と言つた大文字の問題に、一つの角度から鮮やかな手並みで触れてゐる感じ。

夕餉の支度。牛モツの殘りを使つてモツ鍋。ワインを一杯だけ。あとは雑炊にした。雑炊最高。「ノースモア卿夫妻の転落」に感動したので、同書よりさらに一篇「私的生活」を讀む夜。

優れた随筆を讀むと、これは面白いことを聞いたわいと嬉しくなつたり、良い山水の風景でも見たやうに心がふと靜かになつたりするものだが、優れた短篇小説は讀後、自然に頭が下がると言ふか、感謝したいやうな氣持ちになる。


2016/10/28

猫が丸い

午後から急に気温が下がり、冷たい雨になつたやうだ。廊下ですれ違つた外からのお客様たちが冷たい雨粒を肩から払ひながら寒さうにしてゐる。

いつもの時間に退社。確かに外は冷たい雨。歸宅してまづ風呂に入り、身体をあたためる。湯上がりに、ぬる燗の酒を五勺とお土産の握り鮨。やれやれ今週も何とか無事で過せて良かつた。

林語堂の "The Importance of Living" を讀む夜。冬に向けてか、猫が丸くなつてきた。雲門自代云、日々是好日。

2016/10/27

ぬる燗

いつも通りの時間に出社、退社。歸宅してまづ風呂。湯船の讀書は "The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin). 三分の一を越したあたりで漸く、サー・ジョン・アプルビイの登場。第一部から逃げまわつてゐる小悪党と関係があるのかないのか、オックスフォードでは学生が失踪、アプルビイが相談を受ける。

夕食の支度。南瓜の煮付けと明太子だし巻きで、ぬる燗の酒を五勺。我ながら明太子だし巻き、うまいなあ。のち、うな茶。うな茶も良い。

夜の讀書は "The importance of living" (Lin Yutang / Harper)など。日本人には Lin Yutang よりも林語堂と書く方がお馴染だらう。この本は中国語から英訳されたのかと思つてゐたのだが、最初から英語人に向けて英語で書かれたらしい。

この手の本を英語で讀むときに悩ましいのは、固有名詞の英語-漢字対応が分からないことだ。例へば T'ao Yüanming と書かれてゐるのが、陶淵明のことだとなかなか気付かない。漢字を併記してもらへないものか。

2016/10/26

禁酒自慢

また夏日。涼しい國に引つ越したいなあ。往きの車中の源氏物語は「藤裏葉」の帖を終へて、「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)の第五巻を讀了。

いつもと同じ時間に出社、退社。歸宅して、まづ風呂。湯船で "The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin) を讀む。まだ全体の三分の一強くらゐ。通勤で源氏物語を讀み切れるのか、湯船でこれを讀み切れるのか、見込は同程度かも知れない。

夕食の支度。五目焼きそばでビール。ソース焼きそばも悪くはないが、最近の私は塩とだしで味つけした白つぽい五目焼きそばが口に合ふやうになつてきた。閑話休題(それはさておき)、ビールがうまい。同僚が、最近体調が良いのは酒を控へてゐるからに違ひない、と自慢してゐた。更年期障害で腰痛で痛風で老眼の私には耳の痛いお説ながら、この老いぼれから酒を取り上げたら、日々の樂しみなんてないも同然なので聞き流すのみ。

夜は「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂/序文、国書刊行会)より、マイリンク「ナペルス枢機卿」の巻を讀んだり。

2016/10/25

リチュアル

また寢坊してしまひ、ラテン語の勉強時間を縮小。日々、体力と知力と気力が減退して行く年頃になつてなおさら思ふのだが、少しづつを毎日續ける、と言ふのが、この短い人生で何事かを成し遂げる唯一のコツだ。ただし実行するのは非常に難しいのだが、不思議なことに、歳をとるに連れこれが易しくなつて來る。人生の皮肉だらうか。

小雨そぼ降る中を歸宅して、まづ風呂。料理をする気力がなく、作りおきのチリビーンズを温めて、ワインを一杯だけ。そのあと、葱と胡麻油で簡単なスープを作り、出来合いの焼き餃子と。

「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂/序文、国書刊行会)より、昨日は E.A.ポー「盗まれた手紙」の巻から「群集の人」などを讀んだので、今夜はマイリンク「ナペルス枢機卿」の巻。

2016/10/24

鰻と長葱のざくざく

さて、また月曜日だ。今週も何事もなく過せれば良いのだが。往きの車中の「源氏物語」は「藤裏葉」の帖。光源氏が夕霧に教訓を垂れてゐる。おまへが言ふな、と言ふ氣もするが、経験者は語る、なのかも知れぬ。

夕方いつもと同じ時間に退社。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。鰻の殘りと長葱を適当にざく切りして山葵を添へる。私は「ざくざく」と呼んでゐる。呼んではゐるが語る相手はゐないので、猫に「今日はざくざくで一杯やるとするか」などと言ふのである。ワインを一杯だけ。のち、雑炊を作る。もつ鍋のスープを使つて、具は卵と葱とえのき。うまい。明日も頑張りませう。

夜は「茶話」(薄田泣菫著/冨山房百科文庫)を讀んだり。

2016/10/23

紅楼夢ともつ鍋

日曜日。いつもの通り家事と讀書の一日。「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂/序文、国書刊行会)より、昨日はメルヴィル「代書人バートルビー」の巻を讀み、今日は蒲松齢「聊斎志異」の巻を讀んだ。

蒲松齢の巻は「聊斎志異」から短い話をいくつか収めてあるのだが、最後に曹雪芹の「紅楼夢」からの二篇も含まれてゐる。興味深いのは、ボルヘスが大長編「紅楼夢」(岩波文庫版の翻訳で全十二巻)からたつた數ページ抽出したのがこの二箇所だと言ふところ。

今日のメインイベントはもつ鍋。意地汚いやうだが數日前から樂しみにしてゐた。夕方、牛もつを洗ひ直すところから。キャベツ、韮、もやし、牛蒡、大蒜チップ。ラングドックの安いソーヴィニヨン・ブラン。のち、ちゃんぽん麺。満足。これでまた一週間がんばれさう。


2016/10/22

蒲焼の長命術

洗濯などの家事をしてから、午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミ。重川「確率解析」より、Ornstein-Uhlenbeck 半群の超縮小性、対数ソボレフ不等式など。K さんによる安定した講義。午後に仕事があつたのでランチは失礼して帰る。

夕食はいただきものの鰻の蒲焼、南瓜の煮付け、沢庵、豆腐と葱の澄まし汁。折角の鰻丼だから、久しぶりに白米を炊く。私は普段、押し麦との三七なのである。いやもう、銀シャリとは良く言つたもので、目に眩しいくらゐだし、無闇に美味しい。世間の人々が太り過ぎてゐるのはきつとこのせゐだらう。

ところで、もちろん鰻の蒲焼は焼き立てが美味しいのであつて、通は鰻を割くところから(一杯やりながら)焼き上がりを待つのだが、我々下々の民草が口にするのは大抵、冷たくなつたものでゐる。それを美味しく食べる方法が「味覚極楽」(子母澤寛著/中公文庫)に、竹越三叉(竹越與三郎)からの聞書として出てゐる。

曰く、まづ土鍋にいい酒を入れて、強い火にかける。箸でかきまぜてゐると、アルコール分が立つてくるから、マッチで火をつける。ぽつと燃えるわけだがすぐに消えるので、これを火がつかなくなるまで繰り返す。この熱いところに蒲焼を入れて一分。できあがり、と言ふ段取りである。

マッチで火をつけるのが面倒だが、要はアルコールを飛ばせばいいのだらうから、私は単に煮切つてゐる。「土鍋」がポイントなのかどうかは不明。私はまじなひのつもりで小型の土鍋を使つてゐる。「いい酒」は大事。ちなみに、私の経験では、冷凍の鰻でも同じ方法でなかなか美味しくできる。

2016/10/21

週末のペールエール

往きの車中の「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)は「梅枝」から「藤裏葉」の帖へ。幼馴染の夕霧と雲居雁の恋の行方。

夕方退社。歸りの車中では「標的」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)。今回の主人公はサヴァイヴァルの専門家だが駆け出しの小説家でもあると言ふ設定。有名調教師の伝記を書くことを引き受ける。毎回、次々と良く考へるなあ、と思ふのと、さうまでして競馬につなげるか、と思ふのとは変はらない。

今週も良く働いた。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。レバ韮炒めと焼き餃子でペールエール(``Bass")を一本だけ。やはり週末のビールはいい。

2016/10/20

チリビーンズ

また夏日。涼しい国に引つ越したいなあ。今日は家に歸つたらチリビーンズを作ることを樂しみに、一日仕事に励む。

夕方退社。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。作り方は知らないが食べたことは何度もあるので、きつと何とかなるだらう、と適当にチリビーンズを作つてみる。葱焼豚でワインを一杯だけ。のち、チリビーンズ、パン・ド・カンパーニュ、カチョカヴァロ(チーズ)、バナナ。チリビーンズは味つけがややあつさり過ぎたやうだが、なかなか美味しかつた。

最近、寢る前の樂しみに「バベルの図書館」(J.L.ボルヘス編纂/序文、国書刊行会)から短篇を一つ二つ讀むことにしてゐる。一昨日はオスカー・ワイルドの「アーサー・サヴィル卿の犯罪」、昨日はヴォルテールの「慰められた二人」、今日は H.G.ウェルズ。明日は H.メルヴィルの予定。

2016/10/19

ゴールドベルク変奏曲

毎朝、ゴールドベルク変奏曲を聞きながら朝食の支度をしたりあれこれをしてゐたのだが、何ヶ月も聞き續けてゐると流石に飽きて來たので、イギリス組曲に変へてみた。新鮮。しかし数ヶ月、ゴールドベルクに耐へられたのは流石と言ふべきで、確かシモーヌ・ヴェイユだつたと思ふのだが、賛美歌の類が美しいのは毎日同じ歌を歌はなければいけないから美しくならざるを得なかつたのだ、と書いてゐたのを思ひ出した。

夕方、親会社の全体会議のあと退社。少し遅くなつたので、歸宅してすぐに夕食の支度。人参のサラダ、キャベツとアンチョビのフェデリーニ、豚ヒレ肉のソテー、ワインを少々。

これから風呂に入つて、書き物仕事をして、できればマクロ経済学の勉強もしたいのだが、ロングスリーパーの私にはそれぞれ 30 分づつくらゐしか時間を割けさうにない。

2016/10/18

生臭

月に二度の精進日。精進日の朝は味噌汁も昆布だしである。朝食といつもの勉強ののち出勤。通勤電車は生臭どもばかりで閉口ぢや。くさくてかなはん。それに肉食するものの目玉をよくよく見ると、けものに似た光を放つてをる。従つて心もぢや。三千年前に釈尊が、肉を食ふと慈愛の心がなくなると説かれたのはここぢや。と、「味覚極楽」(子母沢寛著/中公文庫)の増上寺大僧正道重信教氏を心の中で真似ながら出社。


2016/10/17

肉南蛮

また月曜日。夏の疲れなのか体調よろしからず。眠くて仕方がないし、腰は痛いし、身体は怠いし、うちの老猫より長生きできるか心配になつて來た。

寢坊したのでラテン語の勉強は単語帳をさらふだけ。「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)は順序数についての再帰のところ。一日最大 30 分なので、なかなか進まない。

夕方退社して歸宅。まづ風呂。湯船の讀書は "The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin). オックスフォードに遁れて一安心と思つた Routh にまた追手。またバスに乗つて振り切つたと思つたらそこにも追手が。たまたま横に座つた、老人ボケした引退教授(私のことではない)に昔の教へ子と勘違ひされて話しかけられつつ、逃亡のチャンスを探す……と言ふところ。この本もせいぜい一日數ページなのでなかなか進まない。

風呂に入つてから夕食の支度。豆と人参と若布の煮物、葱焼豚に胡麻油でワインを一杯だけ。のち、豚ヒレ肉で肉南蛮。鴨にしたかつたところだが予算の都合で。夜はスピノザ研究など。

2016/10/16

「アラジンの奇跡のランプ」

日曜日は、家事と讀書の一日。いつものやうに 6 時には起きて、休日用の簡単な朝食。パンを少し焼いてバタと、いただきものの葡萄で作つたジャム、ヨーグルト、珈琲。午前中は大豆を人参と昆布と煮たり、料理を少し仕込んでのち、小一時間ほど書き物仕事。

晝食はお好み焼きでワインを一杯だけ。チーズを少し。食休みに少し横になろうと思つたら、二時間ほど熟睡してしまふ。その後、三時の珈琲とショートブレッドで目を覚まして、家事のあれこれ。夕方になり、風呂に入つてから夕食の支度。豚肉を焼いて、キャベツの千切り、麦入り御飯、豚汁。

ボルヘス編纂の「バベルの図書館」より「千夜一夜物語 ガラン版」(井上輝夫訳/国書刊行会」を讀む。前に讀んだはずだがすつかり忘れてゐて、アラジンと魔法のランプの物語が原文には含まれておらず(おそらく)ガランの創作であると知つて驚く。それに、物語の舞台が中国であることにも驚いた(もちろん中国にも回教徒が沢山ゐることは知つてゐるが……)。アラジンの魔法のランプは、なんと「中国の真ん中」に埋められてゐたのだ。それをアフリカの悪い魔法使ひが探しに來る。フランス人のガランにとつてみれば、アフリカもインドも中国も日本も一まとめにオリエントであり、アラビアン・ナイトの世界なのだらう。

ちなみに「バベルの図書館」では、ガラン版とバートン版が別の巻になつてゐて、ガラン版には「盲人ババ・アブダラの物語」と「アラジンの奇跡のランプ」が、バートン版には「ユダヤ人の医者の物語」と「蛇の女王」が選ばれてゐる。


2016/10/15

芸術祭十月大歌舞伎

一合ほどワインを詰めた水筒を持つて出て、木挽町辨松で幕の内弁当を買ひ、歌舞伎座へ。晝の部を観劇。

橋之助の芝翫襲名の他、お子さんたちが橋之助、福之助、歌之助をそれぞれ襲名。夜の部は襲名披露の口上がある他、玉三郎が藤娘を踊つたりするのでほとんど席がとれないやうだが、晝の部は比較的空いてゐる。団体客も多いやうだ。

今回襲名の橋之助、福之助、歌之助三人で新作舞踊の「初帆上成駒宝船」から。續いて、七之助が巴御前を演じる「女暫」、児太郎がお染、松也が久松の「浮塒鷗」、芝翫が幡随長兵衛、菊五郎が水野十郎左衛門の「極付 幡随長兵衛」より「公平法問諍」。

七之助は声がもう一つ好みではないと思つてゐたのだが、今日、二階桟敷が西側しかとれなかつたので、花道でのやりとりを声だけで聞いてゐたら、意外に良く思へてきた。私が慣れてきただけかも知れないが。「公平法問諍」は始めの劇中劇の趣向がちよつと面白い。それはさておき、橋之助が芝翫だといふのがまだピンと來ない。女形と立役の違ひのせゐかも知れないが、今のところ親分役くらゐが丁度良い感じ。

祝ひ幕は有名デザイナ作だし、襲名祝ひの絵馬は芸能人の名前が目立つし、現代的な襲名披露と言へようか。最近は襲名続きのせゐか、歌舞伎は襲名ビジネスだなあと思へてしまふ。

2016/10/14

金曜日の夜

また週末に辿り着いた。今週は平日が一日少かつたはずなのだが、妙に長く感じた。夏の疲れと言ふものだらうか。

夕方退社、歸宅してまず風呂。湯船の讀書は ``The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin). 舞台がオックスフォードに移り、話がどこへ進むのかと思ひ出したころに、主人公らしき逃亡中 Routh の乗つたバスがオックスフォードに到着。Gloucester Green とか懐しいなあ。

平日の夜は夕食と就寢までの間に一時間程度、書き物仕事をしようと思つてゐるのだが、なかなか難しい。昼間大した仕事はしてゐないのに、やはり夜になると疲れてゐて、少し酒を飲んだら既にやる氣がしない。飲まなければ良いのだが、そこはそれ、飲まずして何の人生ぞ。やはり朝にもつと早起きして仕事の時間を作るべきだらうか。ロングスリーパーの私ですら、老いるに連れて早起きが楽になつて來てはいるので、その方が合理的かも知れない。

やはり夜はプルタルコスなり、ディオゲネス=ラエルティウスなり、モンテーニュの「エセー」なりを讀んで靜かに暮したい。

2016/10/13

普通の木曜日

いつものやうに寢床で「古楽の楽しみ」を聴く。今週はイギリス組曲の特集だつた。猫に水とキャットフードを与へて、ヨーグルトを食べてから自分の朝食の支度をする。弁当も作り、三十分づつラテン語と數學基礎論の勉強をしてから出勤。

今日も色々あつたけど、何とか無事に歸宅。風呂に入つてから夕餉の支度。南瓜の煮付け、長葱の網焼きに味噌でワインを一杯だけ。のち、卵かけ御飯、豚汁。

夜は小一時間ほど書き物仕事。そのあと寢床でモンテーニュの「エセー」などを樂しんでから就寢の予定。

2016/10/12

戒律

月例の精進日。肉食を断ち、五葷を避け、何事にも心靜かに過すやう心掛ける一日である。朝食の味噌汁も昆布だしで。

夕方退社。歸宅して風呂に入つてから夕食の支度。南瓜の煮付けで冷酒を五勺。のち、高野豆腐としめじと若布の煮物、沢庵、麦入り御飯。スモークトチーズで白ワインを少々。精進日なので禁酒した方が良いやうな氣もするが、様々な戒律の中で飲酒は一番罪のないものだと思ふので、一つくらゐの破戒は許すことにしてゐる。人間に完璧を求めることはむしろよろしくない。

夜は古本屋から届いた「随園食単」(袁枚著/青木正児訳注/岩波文庫)を讀んだり。

2016/10/11

真木柱

曇り空。漸く少し涼しくなつてきた。往きの車中の「源氏物語」(玉上琢彌訳注/角川ソフィア文庫)は「藤袴」から「真木柱」の帖へ。玉葛が色々あつた末に髭黒と結婚。今日は朝から会議やらミーティングが四つ。夕方、いつもよりやや遅く退社。歸りの車中の讀書は「標的」(D.フランシス著/菊池光訳/ハヤカワ文庫)。R.ヒルを一冊讀み終えたので、またディック・フランシスに戻る。

今日は少し遅くなつたので、歸宅してすぐに夕食の支度。南瓜の煮付けと鯵の味醂干しで冷酒をかつきり五勺。今日も何とか酒にありついた。のち、山葵丼と豚汁。明日は月例の精進日なので、その仕込み。

夜に一時間だけ書き物仕事のスケジュールだが、今日はもう疲れたので、なしにしておく。これから風呂に入つたら、「エセー」(モンテーニュ著/宮下志郎訳/白水社)でも讀んで、就寢の予定。

2016/10/10

自づから明らか

祝日で休みだが、いつもの平日の通り、朝食のあと "Wheelock's Latin" と「キューネン 数学基礎論」を三十分づつ勉強する。基礎論は順序數のあたり。ほとんど自明なことをさらに自明なことから証明するのが難しい。つまり、どちらがより自明だつたか混乱してくるのだ。晝までは書き物仕事をする。

晝食は人参のサラダとレトルトのカレーでカレーライス。赤ワインを一杯だけ。少し晝寢をしてから、午後も少し仕事の続き。涼しいし、猫は丸くなつて寝てゐるし、靜かで穏やかな良い日である。

夕食は鯵の味醂干し、南瓜の煮付け、麦入り御飯、豚汁。夜は「エセー」(モンテーニュ著/宮下志郎訳/白水社)より「空しさについて」を讀んだり。

2016/10/09

雨と讀書と酒

朝から雨が降つてゐる。朝食はチアシード入りのヨーグルト、目玉焼きにボローニャソーセージとじゃがいもの酢漬け、トーストにバタと手製の葡萄ジャム、珈琲。朝風呂に入つて、湯船で吉田健一の文章を讀む。午前中は窓から雨など見ながら、ぼうつとしてゐる間に過ぎる。

昼食は人参のサラダを作つて、キヌアとチリビーンズに添える。スモークトチーズ、白ワインを一杯だけ。午後は、通勤の車中で讀んでゐる「死の笑話集」(R.ヒル著/松下祥子訳/ハヤカワ・ミステリ 1761)の最後の五分の一を一気に讀む。讀了。ヒルは後期に入つてもう一つだなあ、と思つてゐたのだが、「死者との対話」と「死の笑話集」の連作は樂しめた。蛇のやうに長過ぎる、とは思ふが。

夕方になり、家事をあれこれ片付けて、再び風呂に入つてから夕食の支度。南瓜の煮ものと納豆で「賀茂鶴」大吟醸を五勺飲みながら、「中華飲酒詩選」(青木正児著/東洋文庫 773)を讀む。青木先生もおつしやつてゐたさうだが、やはり酒を飲むには李白だ。のち、山葵丼と豚汁。暇で静かで良い一日である。


2016/10/08

土曜日

午前中は定例のデリバティブ研究部会自主ゼミ。「確率解析」(重川一郎著/岩波書店)より、Ornstein-Uhlenbeck 半群とその生成作用素の固有値と固有関数、対称性などについて。家で用があつたので、そのあとのランチは遠慮させていただいて歸宅。晝食はお好み焼きとビール。午後は概ね、書き物と讀書。

夕方風呂に入つてから、夕食の支度。ちりめんじやこ大根おろし、鯵の味醂干し、南瓜の煮付け、白菜の浅漬、麦入りの御飯、豚汁。


2016/10/07

ボーモント通り

朝はかなり涼しかつた。漸くに真夏日は去つたやうだが、今日も夏日だし、先にまだ夏日の予報が出てゐる。

夕方退社。兎に角、週末に辿り着いた。帰り道で ``All 4 Love" と言ふ変な名前の薔薇を買ひ、お土産の握り鮨を買つて歸宅。まづ風呂。湯船の讀書はいつものやうに ``The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin). 主人公らしき小悪党ルースが逃げに逃げ、最後はバスに逃げ込んで敵を振り切つたのだが、その行く先はオックスフォード。と、判明したところで、第三部に入つた。舞台はオックスフォードに移り、Beaumont street で大学人たちが会話してゐる。アシュモレアン博物館のある通りだ。随分とイネスらしくなつてきた。

風呂から上がつて、夕食。握り鮨で冷酒を一合ほど。この週末は三連休なので、ゆつくり「人間の絆」(S.モーム著/中野好夫訳/新潮文庫)でも読もうと思つてゐる。

2016/10/06

0から7まで

また真夏日。しかし、いつもの通りに朝食、弁当作り、ラテン語と數學基礎論の勉強。基礎論は漸く、0 から 7 までの數が定義されたが、7 までの數だけでは言ふまでもなく……面白い數學をするのは難しい。先は長い。

いつもと同じ時間に出勤。日差しが厳しい上に、颱風の影響なのだらうか、湿度が高くて非常に不快。今度こそこれが最後の夏の出勤日だらう、と信じたい。

夕方退社。歸宅して風呂に入つてから、夕食の支度。人参とちりめんじやこの寒天寄せでワインを一杯だけ。續いて、スクランブルドエッグとボローニャソーセージ、チリビーンズ、キヌア。

2016/10/05

小食

気温は低いが、颱風の影響だらうか湿度が高いやうで、蒸し暑い。明日はまた真夏日ださうだ。明日こそ最後だと信じたい。

歸宅して、風呂に入つてから夕食の支度。冷奴、人参とちりめんじやこの寒天寄せ、鱧蒲鉾の板山葵で冷酒を五勺。のち、若布と鱧蒲鉾の煮麺(一把)。

日常に原稿書きの仕事が追加されたのだが、夕食の後から寢るまでの間しか、そのための時間がない。しかし、食べるとしばらく頭が働かないし、私は 22 時には既に眠つているロングスリーパーだ。止むを得ず、夕食の量を減らして、寢るまでにどうにか小一時間確保することにした。歳のせゐで小食になつて來てゐるので、丁度良いかも知れない。

2016/10/04

梨と夜風

真夏日。これが最後かと思つたら、予報によれば明後日も真夏日らしい。お天道様に愚痴の一つも言ひたくなるが、そこはぐつと我慢して、「唐獅子牡丹」を口遊みながら出勤。朧月でも墨田の水に昔ながらの濁らぬ光。

夕方退社して歸宅。まづ風呂。湯船では "The Paper Thunderbolt" (M.Innes / Penguin) を讀んでゐるのだが、当然ながら一回に精々 2, 3 ページしか進まないので、良く分からない。今のところ主人公の詐欺師か何かの小悪党が、謎の研究所のやうなところに偶然入り込み、そのあとそこから逃げて、逃げて、逃げ續け、今はダブルデッカ(バス)に乗つて逃げてゐる。

夕食の支度。じゃが芋の酢漬けにオリーヴオイルで、ワインを一杯。その間にキヌアを炊いて、缶詰のチリビーンズ。ワインの殘りでチーズの燻製を少しだけ。のち、いただきものの梨を剥く。夜風は涼しくないでもない。

2016/10/03

月曜日

月曜日。また一週間の始まり。いつもの納豆定食の朝食のあと、三十分づつラテン語と、「キューネン 数学基礎論講義」(K.キューネン著/藤田博司訳/日本評論社)を勉強して、出勤。今日も涼しい。しかし、明日は台風の影響だろうか、また真夏日。いいかげんにしていただきたいものだが、去り行く最後の夏の出勤だと思へばそれもまた良い思ひ出……にはならないか。

いつも通り夕方退社して歸宅。風呂に入つてから夕食の支度。冷奴と鱧の板山葵で冷酒を五勺。のち、豚肉の付け焼きとキャベツ千切り。鱧蒲鉾と若布の煮麺。夜は讀書と少し書き物仕事など。

2016/10/02

日曜日

今日も良く寝た。休日用の簡易朝食として、ヨーグルト、柿を一つ、トーストにバタ、珈琲。朝風呂に入つてから、午前中は原稿書きと、「人間の絆」(S.モーム著/中野好夫訳/新潮文庫)。散歩がてら図書館に本を返しに行き、卵と豆腐とビールを買つて歸宅。

晝食は缶詰のチリビーンズに、目玉焼き、じゃが芋の酢漬け、キヌアを添へて、ビール。三時にショートブレッドと葡萄のジャム、珈琲。夕方までは主に家事。

夕方また風呂に入つてのち、夕食の支度。「酒肴酒」(吉田健一著/光文社文庫)を讀みながら、鱧の板山葵と冷奴で冷酒を五勺。のち、インスタントラーメンをベースにして湯麺を作る。これは食べ過ぎだつた。最近の私はもう、夜にはあまり食べられなくなつてゐる。簡単な晩酌のあと、小さな茶碗のお茶漬けで十分なくらゐ。氣をつけよう。

吉田健一は「理想は、酒ばかり飲んでいる身分になることで、次には、酒を飲まなくても飲んでいるのと同じ状態に達することである」と書いてゐるが、全くその通りだと思ふ。第一の理想はさして難しくないし、この私ですら遠からず叶ひそうだが、第二の状態はかなり難しく、男子一生の仕事かと思はれる。


2016/10/01

「死んで貰います」


また寢坊。元からロングスリーパーなのに、朝夕涼しくなつてきたおかげで良く眠れ過ぎて困る。週末用の簡易版の朝食のあと、朝風呂。

晝食は土曜日の定番でお好み焼き。午後は主に料理の仕込み。いただきものの果物をなかなか消費できないので、ジャムを作る。味見のため、三時にショートブレッドに葡萄のジャムを添へて、珈琲。悪くない。他にじゃが芋を茹でて酢漬けしたり。

夕食は豚肉と野菜を蒸して大根おろしポン酢で、のち、白菜の浅漬、人参とちりめんじやこの寒天寄せ、押し麦入りの御飯、石蓴の味噌汁。

夜は「昭和残侠伝 死んで貰います」(マキノ雅弘監督 / 1970年)を観たり。泣かせるツボの連打に次ぐ連打で出來てゐて、お約束と様式美の極致。主演は高倉健なのだが、池部良の格好良さと演技力で支へられた映画である。そして、辰巳芸者を演じる藤純子(富司純子)が怖いくらゐに綺麗。郷里贔屓で言ふのではなく素直に、昔の日本には美人がゐたものだなあ、と思ふ。いや、たまに歌舞伎座の入口あたりでお見掛けはするし、今でもお美しいので、「昔の」なんて失礼だが。