「夫子憮然曰、鳥獣不可與同羣。吾非斯人之徒與、而誰與。
「論語」微子、第十八、六

2017/03/03

三月大歌舞伎

帰京して、夕方から歌舞伎座へ。知り合ひの邦楽家親子が、今回の演目の一つで人間國寶お二人に伴奏をつけられる。その奥方とご子息らがご家族で初日を参觀されるのに、ひよんな御縁から私もご一緒させていただく。しかし、東側二階の桟敷席をとつたら、演奏してゐる御姿が見えない、と言ふ失敗。それでも聴かせ所では拍手もあつたし、唄ひ手に大向ふから声もかかつてゐて、ご家族はほつとされてゐるやうであつた。

「双蝶々曲輪日記」の「引窓」は十次兵衛に幸四郎、濡髪長五郎に彌十郎、母お幸に右之助など。安定の舞台だつた。

「けいせい浜真砂」は藤十郎と仁左衛門。「絶景かな、絶景かな」で有名な「楼門五三桐」のほとんどそのままなのだが、盗賊の石川五右衛門が傾城の石川屋真砂路、つまり女になつてゐる。五三桐とは、鳥が持つて來る手紙の内容が違つたり、投げつけるのが小刀ではなくて簪だつたり、と微妙に違ふ。ちよつと不思議な演目。聞いた話では、動きが少ない舞台なので、立つてゐるだけで許されるやうな年配の大俳優が演じることが多い、とか。その意味では、今回の配役に文句のつけやうもない。

最後は河東節開曲三百年記念の演目で成田屋十八番の「助六由縁江戸桜」。もちろん、助六に海老蔵。揚巻に雀右衛門など。河東節が演じられるので、口上(右團次)つき。私は海老蔵があまり好きな役者ではないのだが、助六は別だ。海老蔵がやるしかないし、実際、既になかなか良いし、これからどんどん良くなるだらう。

全体に華やかで春らしく目出たい舞台だつた。こいつは春から縁起がいいね。